2022.10.17
地震保険の査定が厳しいのは本当?理由や保険が支払われる具体的ケースを紹介
阪神・淡路大震災、東日本大震災、熊本地震など、ここ数十年で日本では大規模な地震が多発しています。身の回りやSNSでも地震で損害を受け、実際どれくらい地震保険の保険金が出た、あるいは出なかったなどの話を聞く機会が増えたのではないでしょうか。
地震保険の査定は「厳しい」といわれていますが、実際はどうなのでしょうか。
この記事では、厳しいといわれる理由を解説していきます。
地震保険の査定は厳しい?

地震保険の査定は本当に厳しいのでしょうか。詳しくみていきます。
人によって地震保険の査定が「厳しい」「甘い」と意見が割れる理由
地震保険の査定には一定の基準がありますが、一概に厳しい・甘いと断言はできず、地震保険の査定が「厳しい」という人と「甘い」という意見に分かれます。理由は次の3点が挙げられます。
・加入している保険によって査定する損害保険の鑑定人が違う
・自治体の損害認定と地震保険の査定は基準が違う
・家財に地震保険をつけているかどうかで保険金が変わる
【加入している保険によって査定する損害保険の鑑定人が違う】
損害保険の鑑定人は、保険会社の依頼により査定を行い、「全損」「大半損」「小半損」「一部損」の4つの損害区分に分類します。
損害が一番軽い「一部損」以上の認定を受けないと地震保険の保険金受取の対象にはなりません。前提として、鑑定人は査定のチェックリストに基づいて公平な立場で査定を行っています。とはいえ、人間が行う以上、見落としや間違いなどが発生するおそれはあります。
丁寧にきっちり調査してくれる鑑定人か、そうでないかによっても左右されるのも事実です。
【自治体の損害認定と地震保険の査定は基準が違う】
過去に地震保険の査定を受けて「厳しい」と感じた人の中には、「市の査定では『大規模半壊』といわれたのに、地震保険の査定は『一部損』だった」というケースが見受けられます。この「市の査定」とは、行政による「被災者生活再建支援制度」の査定のことです。
ただこれは、そもそもが地震保険の査定と、被災者生活再建支援制度の査定基準はまったく違うものです。制度が違うのですから、違う査定結果になるのは当然と考えるべきです。
【家財に地震保険をつけているかどうかで保険金が変わる】
地震保険は建物と家財に補償をつけられます。同じように被災していても、家財にも地震保険をつけていた方からは「思ったより保険金が出た」という声が多く聞かれました。
これは建物と家財の査定基準が違っており、建物に比べると家財は損害認定がおりやすいためです。
震度4以上でないと保険金支払い対象にならない?
地震保険の保険金支払い対象となる地震の震度は重要です。震度3以下の地震では保険金の支払い対象にならないと考えておいたほうがよいです。
なぜなら、震度4以上でなければ被害につながる可能性が低いためです。査定を行う鑑定人も、そのエリアで震度がいくつだったかは確認しています。
たとえ請求対象の損害状況であったとしても、そのエリアでの震度が3以下であれば、「地震が原因の損害ではない」とみなされ、地震保険からは保険金が下りないということもあり得ます。
一般人には損害の確認・判断が難しい
プロでもない限り、基礎以外の外壁・屋根のひび割れなど、自分で見つけるのは難しいですし、危険がともないます。実際、熊本地震では瓦の修理のため屋根に上ろうとしてはしごから落ち、大けがして搬送されるケースもありました。
仮に発見できても「地震によるもの」と専門知識もなく説明できる人はまれです。鑑定人の言いなりにならないためには専門知識が必要ですが、現実として一朝一夕で建築構造の知識をつけるのは難しいものです。
「地震保険の査定は厳しいもの」だと考えておいたほうがいいでしょう。
地震保険が支払われる具体的なケース
この章では、地震保険の保険金が支払われる具体的なケースやその金額について解説していきます。
もし今後大震災が起こったとき、加入している地震保険からどの程度保険金が下りそうか、ご自身の加入保険の保険証券などを確認してみるのもおすすめです。
地震保険で支払われる保険金の種類とは?
地震保険は火災保険にセットして加入する、文字どおり「地震が原因で起こった損害にそなえる保険」です。地震保険の保険金額は火災保険の30%〜50%の範囲内で設定します。
セット付帯のため、火災保険に加入せずに地震保険だけの加入はできません。また火災保険のみに加入し地震保険をつけない場合、地震によって家屋や家財に損害が出ても保険金は1円も下りません。
まず、地震保険の対象になるものとならないものは次のとおりです。
【地震保険の対象になるもの】
・居住用の建物・家財に限る
【地震保険の対象にならないもの】
・工場・店舗・事務所など居住用以外の建物
・金額が30万円を超える貴金属・骨董品、宝石、美術品
・有価証券・預金通帳・印紙
・自動車・バイクなど(原付は除く)
そして、地震保険は下記の4区分によって保険金額が変わります。
【建物の場合】

※主要構造部…基礎・柱・外壁・屋根・梁(はり)・軸組みなど建物の構造上主要な部分
【家財の場合】
以前は「全損」「半損」「一部損」の3区分でしたが、東日本大震災、熊本地震を受け、2017年1月1日始期の契約より上記4区分に変更となりました。一番軽い一部損の基準に達さないと保険金は下りず、お見舞金などはありません。
地震保険は建物と家財で査定基準が違う?
建物と家財では、査定の基準が違うため、鑑定人がチェックするところも異なります。それぞれ見ていきましょう。
建物の基準は主要構造部(基礎・屋根・外壁・柱・梁・軸組みなど建物構造上重要な部分)の損害が必須です。たとえば、窓が全部割れても基礎などに損害がなければ保険金支払の対象外となります。このため、査定が厳しいと感じた被災者も多かったのではないでしょうか。
次に家財の査定基準ですが、下記5分類、それぞれ代表品目の決められたポイントを積算します。
鑑定人はチェックシートを持っており、それぞれの分類・品目で「損害を受けている」「受けていない」とチェックしていきます。高級なお皿が100枚割れていても100円のお皿が10枚割れていてもポイントは同じです。すべての項目がまんべんなく壊れていると点数が高くなり保険金額が多くなります。
それぞれの分類ごとにポイントが設定されており、特に家具や電気器具類はポイントが高いです。そのため、家具や電気器具類の品目で4〜5点以上損傷があると一部損以上と認定され、保険金が多く出るというわけです。
具体的なケースでシミュレーション
具体的に、どんな火災保険・地震保険に入っている人がどんな損害状況でどれくらいの保険金になるのかを見ていきましょう。
たとえば、下記のような地震保険の補償に加入している場合は次のとおりです。
・火災保険建物2,000万円家財500万円
・地震保険建物1,000万円家財250万円(火災保険の50%)
たとえば、建物・家財両方に地震保険をつけていて、どちらも大半損の場合は、下記のような計算となり、合計保険金額は750万円です。
・建物(大半損):600万円(1,000万×60%)
・家財(大半損):150万円(250万×60%)


地震保険の請求で損をしないために

せっかく高い保険料を払ってきたのに、「保険金が出なかった」なんてことは避けたいものです。損害認定を受ける方法や、地震保険の請求で損をしないためのポイントについて解説していきます。
地震保険の保険金請求の流れ
地震や津波などが原因で家屋が被災したときの保険金請求の流れは次のとおりです。
1.【事故受付】契約者から保険会社へ連絡する
2.【査定の日程調整】:保険会社から依頼された鑑定人が被災状況を現地確認するため、地震保険の査定を行うスケジュールを決める
3.【査定】鑑定人が現地へ訪問し、建物・家財の被害状況を調査。契約者は査定に立ち会う
4.【損害認定】鑑定人の調査結果をもとに損害を認定する
5.【保険金額の提示】保険会社が保険金額を契約者に提示・了承
6.【保険金の支払い】請求時に指定した契約者の銀行口座に保険金が振り込まれる
なお、地震保険の場合、罹災(りさい)証明書や修理見積書の提出は不要です。これは、地震保険の目的が「被災者の生活をできるだけ早く安定させること」であるため、損害の状況・程度に合わせて支払額の割合が決まり、修理にかかった実費を補償するものではないからです。
地震保険を請求するときの5つのポイント
地震保険の請求をする前に、最低限次の5つのポイントを頭に入れておいてください。
・必ず片づけ前に全体写真、損害部分のアップの写真を撮り、メモを残しておく
・契約者から保険会社に早めに連絡する
・査定の立ち会いの際は、見てほしい損害部分を伝える
・書類のみで済まそうとする保険会社もあるので必ず査定依頼をする
・査定に納得できないときは安易にサインしない。再査定や鑑定人の変更を依頼する
火災保険申請の専門業者を使う
最初にお伝えしたように、建物構造の知識がない一般の方が鑑定人と同じ目線で損害状況を正しく判断したり、鑑定人と交渉したりすることは難しいものです。鑑定人の見落としにも気づけない可能性があります。
そこでおすすめしたいのが地震保険の申請や査定の判断材料となる資料作成、鑑定立ち会いのサポートなどをしている専門業者です。
鑑定人と同じ目線で査定に立ち会ってくれ、プロの立場で交渉してくれます。適正で納得できる鑑定を行ってもらうためにも、一度専門業者へ無料相談をしてみてはいかがでしょうか。

